【読書ログ】炎上と口コミの経済学
山口真一 著 朝日新聞出版 2018年
意見は言いたい人が言っているのであって、社会全体とは異なる意見分布をしている可能性が高いとことを意識することが大切だと感じた。
また情報が氾濫する情報社会においては情報が偏っている可能性や時にはデマである可能性を排除することができないが、偏った情報に触れていることを認識しているのとしていないのとでは大きく異なってくる。
ネット社会かどうかにかかわらず、社会生活にとって必要なのは他者を尊重するとこと、自分と異なる価値観も認めること、また基本的な道徳間の教育もとても大切であると感じた。本書の最終の文章が大変心に残った。「自由」に必要なのは「他者を尊重する」と言うたった1つの理念なのではないだろうか。
〜以下 備忘録がてらに興味深いポイント抜粋〜
前書き から
現代ではソーシャルメディアを通して社会的地位や人種に関係なく、誰でも自由に情報の発信が可能となっている。この革命的変化が経済やビジネスに与えたインパクトはおそらく多くの人が漠然と感じているよりも極めて大きい。このような時代において企業のソーシャルメディア活用戦略がビジネスにおいて非常に重要になっている。
第二章ソーシャルメディアと口コミの基礎知識
情報の発信者と生産者(企業)間に利害関係がないので、口コミの実際の商品を使用した人の率直な意見、利用感が書かれている可能性が高く、消費者にとって有用性が高いと言われている。
消費者のソーシャルメディアへの投稿を前提としたキャンペーンについて成功要因を3つ挙げている
①消費者の持つネットワークを活用する
②消費者に自発的な参加遅くしている
③キャンペーンの目的が明確になっている
この3点が満たされていないと思いがけない反応となったり全く盛り上がらなかったりする事例が示されていた。
炎上に対する考察としてネット上では重要な意見の人が表現を控える傾向にあるため賛成であり反対である極端な意見が多く見える傾向にあると述べていた。ネット上の口コミやいわゆる炎上と言うものがサイレントマジョリティーの可視化ではないということが示されている。
第3章 炎上と口コミの間違った常識
炎上に参加している消費者は、ごく少数で、低い割合であることを統計的に示している。
また点数評価と文章の口コミの双方書き込めるようなレビューサイトの傾向検証として、低い点数の消費者の方が口コミ文章を多く書いている傾向が示されており興味深い。
※アプリスストアにおけるレビューの分析としてはダウンロード直後に書き込んでいる人の方が多く、充分利用してからコメントを書く人の5.6倍に登っていた。
また企業や個人の反社会的行為に対して叱りつけると言う意味合いで正義感を持って、延長に加担する人の属性はクレーマーの特徴と非常に近い。高学歴高所得で社会階層が高い人が多く自尊感情が高く完全主義的な傾向が強いと言うことが特徴だそうだ。
炎上に限った話ではなく、消費者による改善要望や企業への意見も、賛同も、それが代表的な意見とは限らないと言うことを認識した上で向き合う必要がある。
第4章完全炎上対策マニュアル
ポイント
①書き込み内容、タイミングの配慮
②企業として取り組むべき事前予防策
立場のある大企業や官公庁の広報に対して人々は絶対的な正しさと倫理を求める傾向にある。
炎上しやすく注意するべき3つ
①格差を感じさせる話題
②熱心な人がいる話題
③型にはめようとする話題
また、
コミュニティの中に特定の暗黙知があるかどうかにも注意したいと感じた。ユーザにとって違法かどうかは二の次でありまず、自分たちの中に共有される規範に沿っているかが重要となる。
援助が起きた場合の確認ポイント
①規範の内容の妥当性
②批判者の特徴確認
③マスメディアやまとめサイトに飛び火があるかどうか
さらに、対応策としては
④批判を「推奨」と捉える姿勢
※ムーニーの事例紹介は大変興味深かった。当初の発信が適切な表現ではない可能性を否定せずに、批判による気づきに感謝をする姿勢で改めてコメントを発信したことが炎上の改めてコメントを発信したことが炎上の沈下と山道の獲得につながった鎮火と賛同の獲得に繋がった。
⑤事実関係の公表に徹する
⑥隠蔽しない
※ご登録の双方で失敗したのがペヤングの事例として紹介されていた。当初の投稿者に投稿の停止を求める要請をしたことが露呈しかえってで悪影響を及ぼした。
⑦言い訳をしない
※「結果として〇〇となってしまった」や「〇〇と言う理由から不可抗力であった」といった表現は避けるべきである。
ある主張を貫く場合には事実関係の確認と好評に努めることが重要であって消費者への批判や反論をしてはいけない。
第5章ネット社会はこれからどうなっていくのか
フェイクニュースが社会にもたらすこととして下記3点を挙げている
①分断の激化
③ネットの価値そのものの毀損